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『光の帝国 -常野物語』 -恩田陸 [小説]


光の帝国―常野物語

光の帝国―常野物語

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2000/09
  • メディア: 文庫

[あらすじ]
全ての記録を自分のなかに「しまう」ことができる家族、遠く離れた音を聞き取ることができる人々、つむじ風のように走る老人。
常野の人々は不思議な力を持っていた。
常野の民は在野に下り、人々と交わり、穏やかで優しい人々として生きていた。
常野の民と常野の民にかかわった人々が織り成す不思議で暖かく、少し寂しい連続短編集


ずっと本棚に眠ったままになっていました。
久々の「恩田本」です。
少し前ですが、『蒲公英草子』が直木賞にノミネートされた時にあわせて買ったものでした。

本編は短編集の組み合わせで成り立っています。
百人一首を暗唱できると自慢している同級生。
それがすごいことなのか?と怪訝な様子の小学生の姿からお話は始まります。
彼の家族は、読んだ本を全て記憶することができるのです。
家族のあいだでは、それを「しまう」と呼んでいます。

最初のこのくだりで、すっかりはめられてしまいました。
なにより、「しまう」という表現に魅了されてしまったのです。
何なんでしょうか、この人たちは。
彼らの中に大きな引き出しか箪笥のようなものを思い浮かべますが、なんだかそんなありきたりじゃ「しまう」がしっくりこなかったんですよね。
もっと体の内部に染み込んでいくような。綿が水を吸うような、血に記憶されるような・・・。
そんな感じがこの「しまう」という言葉に感じられたんです。(自分がヘンなんだと思いますが)
好きですね。この表現。
この物語のなかで、最初の章が一番好きです。

短編の一章一章に違う不思議な能力を秘めた人々が登場します。
水にその人の未来が見える少女。
戦前から、いやそれより以前から、ずっと老人の姿のままツル先生など。
不思議な人々は常野という名前で結ばれています。
それが、土地の名を現すのか、それとも一族を現すのか。
常野の人々は、不思議な確かに不思議な力を持っていますが、隠れ住まうのではなく在野に下りて人々に溶け込んで静かに暮らしてきました。
心穏やかに。そして優しく。
そうやって積み上げられた物語が、一つの章を経ることで集約され始めます。
「光の帝国」です。
大戦中にその存在がばれ、家族を失った常野の子ども達をツル先生が匿っていました。
まずやってきた二人の子供、言葉を蓄積(しまえる)できるが、両親の不仲で怯えた目をした建と、母親が都会で見るビジョンに耐えられなくなり失踪した遠目の子あや。
そこに、死にかけて転がり込んできた上野の音楽学校に行っていたコマチ先生。
穏やかに暮らしていたはずの分教場にも一族の者たちが次々と軍部に連れ去られているという報が届けられる。
森でくらしていた力持ちの大男ジロ先生と、メロディで会話する岬、そして母親を殺したという信太郎を加え、分教場の大人と子供たちは建が考えた祈りの言葉を捧げながら静かに暮らしていくはずだった。
だが、時代がそれを許さなかった。
ツル先生が不在を狙って軍部が分教場を襲う。
不思議な力を目当てに。
そして、息絶えた子供たちはツル先生のもとに来て約束をする。
「時間がかかっても戻ってくるから、ツル先生。待っていて」と。

現代の常野の人々は一人の少女を中心に徐々に集結していきます。
大戦中に助けることができなかった子供たち。
そして、まだ赤ちゃんの頃に常野を救ったひとりの少女。
誰の生まれ代わりなのか。
それとも、「あの事件」の償いなのか。
常野で、在野で、少女を中心とした結束が必要とされる時代がくる予感を孕みつつ短編集はプツンと終わります。
最後の章「国道を降りて・・・」で、常野へ向かう少女美咲は常野の民ではないようですが、死んでしまった岬の生まれ変わりのを思わせます。
彼女にプロポーズした律は何かを感じ、知っているようですのでもしかしたら誰かの生まれ変わりなのかもしれません。

「綾なす」という言葉がありますが、この物語はひとつひとつの章が美しく物語を綾なしています。
織りあがった錦は、見事なモチーフになっていました。
全てを描くのではなく、見る人によって角度によって景色を変える。
寂しく、暖かく、悲しく、美しい。
そんな物語でした。
恩田陸の小説の中で、今のところ1位に輝きましたよ。自分の中でw(ドミノも捨てがたいですが)
いつも、読者に託すべき部分を描きすぎてその後の余地がない~と感じていましたが、イイ感じに残ってます。
続きが読みたくなる。
自分で描いてもいいんですが、彼ら彼女らのその後を追っかけたくなりますね。
これは誰の生まれ変わりか?って推理してみるもいいのですが折角「常野」の名前を戴いたお話があるのですから
そちらに譲るとしましょう。

ちなみに・・・
信太郎が、炎で人を焼き殺す能力を見て、「日向棗・・・」と思ったのは自分だけでしょうか?
はい。蛇足でした・・・orz


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